読書と映画の記録

読書と映画の記録です

理知的で、不器用で、やさしいひとたち。

月のこと、雪の結晶のこと、地球温暖化のこと、素粒子のこと、地層のこと。

それぞれに詳しい、理知的で不器用な人たちとのふれあいを通して、すこしやさしい気持ちになれるお話。

 

どのお話も良いお話なのですが、個人的に1番お気に入りなのは『エイリアンの食堂』。どこかつかみどころのない研究所勤めの女性と、幼くして母を失った娘とその父の話なのですが、子どもの純粋さ、母のいない娘と父の関係のぎこちなさ、そして研究所勤めの女性の理系ならではの『ちょっとズレた励まし方』がじんわり、ほっこりきます。

他のお話も理知的な人が多くて、人柄にほっこりするのもあるのですが、彼らの語る知識が普通に読んでて面白いです。小説も読めるし色々な知識も手に入る、一石二鳥でオトクな書籍です。気象・素粒子・地層・化石・天文に興味ある人にオススメ。

 

つづきはネタバレアリ感想

 

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『調律師』は、何を目指せばいいのだろうか - 羊と鋼の森をよみました -

羊と鋼の森を読みました。
とある山育ちの少年が、調律師に出会い、魅せられ、調律師となり、そして『調律師として何を目指していくか?』を見つけるまでの物語。

調律師と隣接する仕事であるピアニストであれば『こういう音色のピアノを弾けるピアニストになる』であったり、ピアノの製作者であれば『こういう音を出せるピアノを作る』など、結構目標が明確になりやすそうです。しかし調律師は『ピアノと、ピアニストの狭間』の職業。彼らの調律はピアノに影響するものの、ピアニスト自信も『どういう調律をしてほしいか』と明確に言えるケースばかりではありません。実際、主人公も『なんかちがう』という、あいまいなオーダーに悩まされます。

主人公のまわりにいる調律師たちも様々。『あえて、繊細になりすぎるように調律しない』と明言する調律師や、一方コンサートにひっぱりだこの調律師もいます。先輩たちはお互いに『彼の調律も見てみなよ』と、全く異なるポリシーを持つ同僚の調律を主人公に見てみるように言います。

色んな調律を見て、色んなお客さんに出会って、主人公の出す結論は……。結論を出すまでの道のりが、すごく良くて、さわやかで、良い小説でした。
調律師の話ですが、ピアノ経験の一切ない人間でも普通に楽しめるお話です。おすすめ。

 

つづきはネタバレ有。

 

 

 

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2023年12月に読んだ本のまとめ

他の人がやってていいなあと思ったので、自分もやってみる。

 

 

 

 

小説ブルーピリオド あの日の僕ら / 行成薫, 山口つばさ

ユカちゃん目当てで読み始めたけど全員のエピソードがほんっとによかった!漫画ファンにはぜひ読んで欲しい一作。漫画では長らくあってない子たちに会えるのも嬉しかった。

 

おこじょさんの家飲み家ご飯 / ヤゼ

おこじょさんが癒し系でかわゆい。ごはんも残HPが10でも作れそうな簡単ご飯が多くていい感じ。癒されたい人におすすめ。

 

近畿地方のある場所について / 背筋

タイトルでずっと気になってたのをついに購入。一連の怪奇現象を色々な方向から伝聞するホラーだけど、私にはちょっと合わなかった。

 

傲慢と善良 / 辻村深月

婚活で出会った2人の話。結婚する気が全くない人間には理解ができない点が多くてちょっと読んでてしんどかった。

 

教室がひとりになるまで / 朝倉 秋成

自殺が続く教室、目覚めた特殊能力、特殊能力者を使って連続自殺の謎をとけ!みたいな感じ。スピード感は良いし設定も面白いと思うんだけど、動機とか色々気になってしまってしっくりこなかった。

 

恋に至る病 / 斜線堂有紀

恋をしている2人の巻き起こす事件と最後に残る謎、という感じのお話。読んでから考察を楽しむタイプの話な気がするが、考察するときにひっかかってしまう要素があって、ちょっと私には楽しみづらい一作だった。

 

コンビニ人間 / 村田 紗耶香

コンビニ店員しかできない人間が、『普通』を強要される話。読んでてしんどいよォ……と思う点が多いが、考えさせられる話だった。レビューで『適材適所だよね』と書いてあったが、ほんと、適材適所で許されればいいのにな、と思う。

 

羊と鋼の森 / 宮下奈都

ふしぎなタイトルにひかれて手に取ってみた。『羊と鋼』とはピアノの中の『ハンマーと弦』のことらしい。主人公の出生、そして『言われたこと』がとても良い感じに絡みあって最後を迎える良い話だった。元気の出る話でもあるので、年始におすすめ。

 

逢魔宿り / 三津田信三

某施設の夜警を夜に読んで、『これは夜に読んじゃいけない……』と思って行ったん読むのを止めたくらいに怖かった。現代が舞台のはいよるホラーを読みたい人におすすめ。

 

走馬灯のセトリは考えておいて / 柴田勝家

タイトルに惹かれて購入。表題作は『中の人の死後まで残るVTuberのAIを作る』という現代×SFなストーリーなのだが、ただのSFではなく、人間の情やそういうものが絡んでおいてとても素敵な一作だった。表題作以外も『現代×SF』が上手くていい感じ。バーチャル福男の話とかすんごい好き。

 

伽藍の姫 -がらんのひめ- 1巻 / こるせ

表紙を見て直感で購入。機械文明のあるファンタジーに、戦う長身美女。最高。まだ謎だらけなのでこの後が楽しみ。

 

変な家2 ~11の間取り図~ / 雨穴

安心と信頼の雨穴さん。『11の間取りが1つのストーリーとしてつながる』は事前知識として得てはいたものの、『これ?つながるか?』と思いながら読み進めてると、だんだん、だんだん、つながりができてくる。そして最後の解決編が本当に良い。満足。

前作の変な家とは『間取り図』というところは共通してるけど、異なるアプローチだったので相変わらず楽しめた。

 

 

【おしらせ】

ブクログもはじめました。ブクログの方には軽めの感想をかいて、こっちではがっつり書くみたいにしてく予定。

booklog.jp

 

 

痛快復讐コメディ!ゴゴゴゴーゴーゴースト(5巻完結)感想

社内不倫の末、捨てられ傷心しヤケ酒で死にかける主人公、ウシロ。
そんなウシロの前にオネエの幽霊、正子が現れる。
正子はウシロにウシロを捨てたあいつ祟っちゃおうよ、と持ち掛ける。

 

それから2人は、ムカつくやつらを祟る生活をはじめるが…!?

 

という、ポジティブなんだかネガティブなんだかよくわからない始まり方をする漫画。最初は表紙も遺影っぽいしなんだか怖そうな漫画だなあと思ったけど、結構痛快な復讐をするし、復讐もなんか『いやうん…あれは…ムカつくわ…』ってものが多い。やったれウシロ!やったれ正子!!と応援してる間にだんだんウシロの様子がおかしくなるのだが…。

 

結末としては個人的にはとても好き。主人公コンビは5巻にわたって人を祟りまくってるので、このままハッピーエンド…行かんやろな…って予感は最初からする。何巻になってもする。でも『2人の人生って、こんなんよね~~』って感じのハッピーエンドですごい良い感じ。5巻完結で読みやすいので、年末にちょっとダークで痛快なお話が読みたい人にオススメです。

 

 

続きはネタバレ有感想。

 

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宗教とは何のためにあるのか、を考えさせられる話【スリーピング・ブッダ 感想】

※ この記事には、宗教に関する内容が含まれています。

 

寺の跡取りである広也と、バンドを挫折して僧侶の道に進んだ隆春。対照的な2人が、同じ寺で修行に入る。個性豊かな同輩、先輩に出会い、修行の中で2人はお互いを理解し、仏教への理解を深めていく…という、簡単な話ではなく。

 

修行し、寺を出て、僧侶になる。それは『僧侶としてのはじまり』に過ぎず。僧侶になったからといって、仏教のすべてを理解できるわけではないのだ。

寺の跡取りである広也と、一般人として育った隆春の間には思想の差がある。広也の中には地元の寺で起こった色々がある。2人は時に対立して、時に歩み寄ろうとする。影響しあうこともあるし、理解しあうこともあるし、理解しあえないこともある。

それぞれの仏教、というよりは『宗教』の形がある。2人はどんな道を歩んで、どんな答えをだすのか。最後に2人にだした答えが、とても印象に残る話だった。

 

 

※ここから先はネタバレ+個人の宗教観の話が多めです※

 

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儚い羊たちの祝宴 感想

儚い羊たちの祝宴読みました。

良家を巡る不思議な物語。つながっているような、つながっていないような、話たち。

良家の人々なのでどの話もお上品にはじまるのですが、だんだん雲行きが怪しくなる。いえ、最初から『ちょっとヘンだな』と思うのですが、凡人には『良家だしな、そういうもんかな』と受け流せる程度。しかし雲行きなどんどん怪しくなっていき、最後には『人って、こわ』と思う展開になるのですが、そこは良家、怖い展開すらお上品です。

びっくり展開ではない、じわじわと突き落とすタイプの怖さ。濃厚だけど後味が良いお話なのでおすすめです。(※後味の良さは個人差があるかもしれません)

 

つづきはネタバレ感想。

 

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妻に先立たれた孤独な男性の結末は、 - 幸せなひとりぼっちをみました -

妻に先立たれた孤独な老人、オーヴェ。

職も失い、首を吊ることを決意するが、にぎやかな隣人が引っ越してきて、首を吊る機会を逃してしまう。

にぎやかな隣人に巻き込まれ、首を吊る機会を逃し続ける彼。隣人一家とのつながりもでき、ひとりぼっちでは、なくなっていく。

 

スウェーデンの映画で、北欧の映画らしい、ちょっとくもり空にしんみりと続いていく映画。ジャンルにコメディが入っているサイトもあるのですが、日本人が想像するコメディとはちょっと感覚が違う感じがします。

原作は小説なのもあってか、話がしっかり骨太でいい感じです。

 

老人は結構偏屈なのですが、引っ越してきた隣人一家の女性はイラン人なこともあるのか、あんまり気にせず。そんな女性に影響されるように、近所の人たちも彼を頼るようになります。

おじいちゃん、ひとりじゃなくなったね、とほっとする人、きっと多いはず。

休日の昼下がりにおすすめの映画です。

 

 

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