ふしぎなタイトルだなあと思ったら、ジビエの本らしいので読んでみた。
ジビエのシェフの亮と、猟師の大高の物語。
シェフの亮はジビエ肉の調達にもこだわりがあり、自分で調達すべく、山に猟に入るが、遭難しかけてしまう。そんなところを救ってくれたのが猟師の大高と猟犬のマタベー。亮はそのまま大高と親しくなるが、大高のまわりで不穏な動きがあり…………?
猟師である大高と大高の知人の猟師たち、シェフの亮や亮と同じくジビエを扱うシェフたち、ジビエ大好きの亮のレストランのオーナーなど、色々な立場からジビエを扱う人々が出てくる一方で、ジビエに反対する人もいる。小説自体も読みやすく、良い話なのだけど、ぜひあとがきまで読んで、ジビエをとりまく環境について考えてみてほしくなる本でした。小説の中でも『もし、獲らなかったら』という話はあるのですが、獲らなければまるっとよくなる、という話でもないのですよね。あとがきではケモノをとることと、魚をとることの対比があって、より深く考えさせられる良いあとがきでした。
あといぬがかわいい。
つづきはネタバレ感想
みかんを食べたひよどり、食べてみたーい!!ってなる本でした。今も食べてみたい。でも、この話ではたまたま放棄されたみかん農園があったので『みかんをいっぱいたべた、ほんのりみかんの香りがするひよどり』があまり誰にも迷惑をかけない形で実現してますが、これが人が管理するみかん農園だったら、みかん農園の人は大打撃なわけなんですよね、と思うと、むずかしい話だなあ、と。
どうぶつ用のほったらかし果樹園とか作れるといいんだろうと思うんですけど、たぶんそれはそれで虫の被害が…………とかなるんでしょうね。難しい話だなあ。
シカにしてもそう。かつては日本にもオオカミが存在していたので、オオカミによってある程度シカの数は抑えられたのだと思いますが、今はオオカミは居ないので、シカを食べる動物というのは、特に南の方ではあんまり居ないのではないでしょうか。人間が減らさないと諸々を食べ過ぎてしまい、また別の問題を産む。そう考えるとある程度数を減らすのは、人間中心の考え方ではあるかもしれないけれど、今の社会では必要なことなんじゃないかな…………という気がします。
この話の中で1番胸が痛むのは、オーナーが連れていく『動物の焼却処理場』なんですよね。猟師によって適切に処理されていれば食肉となって流通できた可能性もあるのに、落命した方法によっては食肉とはなれず、ただ焼却処分するしかない。そういうことが起きているのが現状なんだなあと思うと、せっかくならおいしくいただきたいな…………と思うのでした。
シカの肉は2度、バーガーと串焼きで食べたことありますがとても美味でしたし。イノシシも串焼き食べましたが、美味でした。ぼたん鍋はまだ食べたことないので食べてみたいなあ。
話自体も読みやすいし、考えさせられるし、良い本だなあと思いました。
あとがきが記憶に残ったのってはじめてなんですが、あとがきの『ケモノの肉を食べることと、サカナを食べることの間に、どれだけの差があるだろう』ってすごくそうだなあって思うんですよね。
おわり