読書と映画の記録

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もしある日、身近なひとが異形になってしまったら? - 人間に向いてない 感想

おれもおれも!と思って手に取ったらオゾミス(おぞましいミステリー)の文字。

本を開いたある日異形になってしまう病気が流行っている世界線らしい。つまり人間が表紙の通りになってしまうということだ。抽象的な概念の表紙だと思ったら作中世界観そのままの表紙だった。

 

主人公はある日息子が異形になってしまった女性。異形は不治の病として死亡扱いになる。なので旦那はそんなもの捨てろ、と言うが、彼女はそれを『息子』と認識しているので頑なに捨てようとしない。そんな彼女を取り巻く物語。

 

異形の見た目はおぞましいんだけど、出てくる人間とかは普通の人。身内が異形になったらそういう反応にもなるだろなあって感じ。そして私はこの展開はめっちゃ好き。おぞましいのは異形の見た目だけで展開がおぞましいってわけではないのでオゾミスって言葉を恐れずに読んでみて欲しい作品。

もしある日身近な人が異形になってしまったら?という思考実験っぽい感じもあって意味でも楽しくてオススメです。

 

続きはネタバレ感想

 

 

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アニメ ラーメン赤猫を見た

アニメも最近よく一気見するので記録しようと思う

 

ラーメン赤猫1話~12話を見た。漫画は冒頭部分だけ読んだことある。

猫のラーメン屋に人間のパートが入る、というところから話がはじまる。このアニメの面白いポイントは人それぞれだと思うのだけど、自分的にすごい好きなのは『現代にかなり近い設定のまま、ネコが働く苦労を描いている点』だと思う。

毛を落とさない訓練とか、ネコの法的人格とかあったり、相続にあたって弁護士の助力があったり、経営にあたっても弁護士の助力があったり、経営者である佐々木さん(ネコ)が定期的に商工会議所に行ってるとか、『ただかわいいネコちゃんがラーメン作ってる漫画』じゃなくて『もし仮にネコが二足歩行してラーメン屋を経営したら、何が必要で、何が起きるだろうか』が考えられてそうな設定がすごく好き。

 

『普通のネコ』も居るんだよね。というか普通のネコもいるから成り立つ設定なんだよね。イイよね。

 

ただのネコかわいいだけじゃないけど、やっぱりネコかわいいもあるラーメン赤猫、疲れた時にオススメです。個人的にイチオシはサブだけどみんなかわいいんだよな。

 

つづきはネタバレ感想。

 

 

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母の執念と、娘の執念の大バトル。『RUN』感想

未熟児で産まれ、生まれつき色々な疾患を持ち、車いすで暮らす女子高生のクロエ。クロエは大学進学を控えており、大学の合格の知らせを日々待っている。

ある日、母が買ってきた買い物袋からチョコをくすねようとしたところ、怪しい薬を発見してしまう。そしてそれは、自分に『新しい薬』として出された。彼女はそれを飲むのを避け、その薬が何なのかを探ろうとする…………。

 

という、探る過程で色々なことに気づいてしまう話。娘の独立心と母の執念の大バトル。なんとかして家から出ようとする娘、なんとかして娘を家にとどめようとする母。車椅子の子どもと社会的信頼も金も車もある大人のバトルでは分が悪い。娘、がんばれ…………!がんばってくれ…………!と祈りながら手に汗握る1時間半でした。1時間半で充分満足。

 

アマプラのカテゴリはサスペンスなんですが、この母はある意味ホラーなのでは?ってくらいホラーでした。良かった。

 

続きはネタバレ感想。

 

RUN/ラン(字幕版)

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おいしい珈琲を淹れる女の子たちの物語。 - 『コーヒーカンタータ』 感想

表紙の絵がすごく好みで手にとってみた。

はじまりはどうやら箱入り娘っぽそうなお嬢様の琥珀が珈琲の街に行くところから。琥珀は『この街にある珈琲の専門学校に入る』という目的があって街に来たのだが、右も左もわからず右往左往しているところを、街の少女ミルともかに救われる。

色々あるけど、ミルともかとともに学校に入り、課題をこなして、おいしい珈琲をいれることを目指す!

 

のだが、3巻で完結してしまうのだ……!!偉大なる第一歩を踏み出して綺麗に区切っているのでぜひ3巻まで読んで欲しいのだが、でももっと続いてほしかった…!

とにかく女の子たちがかわいい!のも良いポイントなのだが、みんないい感じに長所が違うのがすごくいいのだ。それぞれに『臆病になってしまうポイント』があって、それぞれがそっと背中を押してくれる。育ちも性格の違うみんなだからこそ、困った時の誰かからいいアイデアがでて乗り越えられる。そんな黄金チームが課題を乗り越えていく話。3巻まででも本当に良い話なのでぜひ読んで欲しい!今ならKindleUnlimitedで3巻まで読めます!ぜひ!

 

 

 

東南アジアの田舎で信仰される女神。代々受け継がれる神がもたらすものは……? - 女神の継承 感想

タイのイサーン地方で信仰される女神ついてドキュメンタリーを作成するために撮影に赴いた撮影隊。最初は現在の巫女について語られていくが、その中で巫女の親族に不思議な動きがあり……?といったはじまり。

正統派の田舎系ホラーだけど、しっかり怖い。というか、演技上手すぎ。多分合成ではない気がするのだけど、人間ってこんな風に動くんだ!?って動きをめっちゃしてくる。なのでよけいに怖い。

モキュメンタリー系は酔ってしまうことがあるのだが、この映画は撮影隊がちゃんと三脚を使っているのか全然酔わなかった。定点カメラのシーンも多いし。一方でモキュメンタリーだからこそできる良さみたいなのもあって良かった。

あとタイ人は犬が好きではない(タイにおける犬のイメージは野犬なので)と聞いたことあるが、本当に好きじゃないんだな……と感じられる映画だった。愛犬家が見るとちょっと悲しくなるかもしれないので愛犬家にはおすすめできない映画かも。

ともあれ正統派ホラーで良かった。正統派のホラー見たい時にぜひ。

 

つづきはネタバレ感想

 

女神の継承

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カリフォルニアで、メキシコ移民がすし職人を目指す! - 『イーストサイド・寿司』感想

なんか元気が出る映画を見たいと思って、なんか元気出そうだし美味しそうだからこれにしよ!と思ってチョイス。

カリフォルニアで果物屋台を営むメキシコ移民のフアナ。父ひとり、娘一人を養うために今日もがんばる…………が、強盗に襲われ、この先を考える。そんな彼女の目についたのが、日本食レストランの求人。最初は裏の厨房で能力を発揮するが、彼女はだんだん寿司に興味を持つ。が、父も娘もあんまり興味なさげ。父はメキシコ人なんだから、タコス屋で働いた方がいいだろう、と言うが、それでも彼女はすしをやりたい。

しかし、メキシコ移民がすしをやるには、能力だけじゃないハードルがあって…………?

 

という話。人種を見ずに彼女自身の能力を評価する人、人種を見て彼女自身の能力を見ようともしない人、彼女自身の能力は評価していても人種を気にする人、色々出てくる。私は『人種なんか関係ないじゃん!ちゃんと修行して美味しければいいでしょ!!』派なので主人公がんばれーーー!!!と思いながら時々怒りながら見ていた。

喜怒哀楽揃って最後はちゃんと笑って終われる結末。作中のお寿司が食べてみたくなる良い映画でした。

 

つづきはネタバレあり感想

 

イーストサイド・寿司

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ジビエを巡る、おいしいだけじゃない、葛藤の物語 - 『みかんとひよどり』感想

ふしぎなタイトルだなあと思ったら、ジビエの本らしいので読んでみた。

ジビエのシェフの亮と、猟師の大高の物語。

シェフの亮はジビエ肉の調達にもこだわりがあり、自分で調達すべく、山に猟に入るが、遭難しかけてしまう。そんなところを救ってくれたのが猟師の大高と猟犬のマタベー。亮はそのまま大高と親しくなるが、大高のまわりで不穏な動きがあり…………?

 

猟師である大高と大高の知人の猟師たち、シェフの亮や亮と同じくジビエを扱うシェフたち、ジビエ大好きの亮のレストランのオーナーなど、色々な立場からジビエを扱う人々が出てくる一方で、ジビエに反対する人もいる。小説自体も読みやすく、良い話なのだけど、ぜひあとがきまで読んで、ジビエをとりまく環境について考えてみてほしくなる本でした。小説の中でも『もし、獲らなかったら』という話はあるのですが、獲らなければまるっとよくなる、という話でもないのですよね。あとがきではケモノをとることと、魚をとることの対比があって、より深く考えさせられる良いあとがきでした。

あといぬがかわいい。

 

つづきはネタバレ感想

 

 

 

 

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