おれもおれも!と思って手に取ったらオゾミス(おぞましいミステリー)の文字。
本を開いたある日異形になってしまう病気が流行っている世界線らしい。つまり人間が表紙の通りになってしまうということだ。抽象的な概念の表紙だと思ったら作中世界観そのままの表紙だった。
主人公はある日息子が異形になってしまった女性。異形は不治の病として死亡扱いになる。なので旦那はそんなもの捨てろ、と言うが、彼女はそれを『息子』と認識しているので頑なに捨てようとしない。そんな彼女を取り巻く物語。
異形の見た目はおぞましいんだけど、出てくる人間とかは普通の人。身内が異形になったらそういう反応にもなるだろなあって感じ。そして私はこの展開はめっちゃ好き。おぞましいのは異形の見た目だけで展開がおぞましいってわけではないのでオゾミスって言葉を恐れずに読んでみて欲しい作品。
もしある日身近な人が異形になってしまったら?という思考実験っぽい感じもあって意味でも楽しくてオススメです。
続きはネタバレ感想
オゾミスっていうよりはスカッとだと思うんですよね。
途中は『父ムカつく~~!がんばれ母!』って感じで見守りつつ、ただ母の気持ちはわかるけども、ただ母ちょっと息子に依存しすぎなのかも、息子離れしてもいいのかも、とかちょっと心配になりながら見守る。
出てくる人々もなんていうか、まあ身内が異形になったらこうもなるよねって感じ。みずたまの会の人もなんていうかかわいそうだなあというか、なんだろう、結末の真実を知った後の彼らのその後の心情とかはあんまり想像したくないなと思う。でも現実のXXの会もこういう側面あるんだろうなみたいな、なんだろうな、現実ってこうだよな…………って印象。
難しいよね、異形になった親類と向き合えない気持ちはめっちゃわかる。私も向き合えないと思う。だから主人公は強いと思うと同時に、危うさも感じて怖いとも感じる。
けど、この結末ですよ。主人公の一途さがかなったというか、最後の方で作中でも書かれてるけど天の配剤で天の与えた試練なのではないかと書かれているけど、主人公は見事試練を乗り切った側なのだろうなと。試練を乗り切れなかった側のことはあんまり考えたくないけども。
オゾミスという言葉を与えてしまうのはもったいない!!って思うくらいにはこのスカッと結末好きなんですよね。本当、おぞましいのは異形の見た目だけであとは思考実験で面白い作品+結末もすかっとしていいのでぜひ読んでみて欲しい作品。