読書と映画の記録

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多様性はなぜ必要なのかを改めて考える - 『多様性の科学』よみました

多様性の科学を読みました。

表紙が目立つのでなんとなく手に取ったのですが、『CIAはなぜ、911を防げなかったのか?』に始まる、興味深い本でした。

 

人は人を採用するときに自分に似た人間を採りやすいといいます。CIAも例にもれず、『キリスト教の白人男性』が多い集団でした。彼らにとって説得力があるのは、王様のような『荘厳なところで演説をする人』です。なので、『薄暗い洞窟で演説をする人』に人を動かす力はないだろう、と思っていたのです。

これが、当時のCIAが911を防げなかった原因だそうです。『薄暗い洞窟』は、イスラム教にとっては、仏教における菩提樹の下のようなものでありました。しかしながら、キリスト教の集団であるCIAにはその背景が伝わらなかった。

 

このような感じで、『組織の多様性が少なかった、あるいは、多様な意見を発言しづらかったことによって起きた色々』について色々解説されます。

多様性の少なさだけでなく、航空機のコックピットや登山を例として『権力勾配による発言しづらさによって発生した失敗』や『特定の属性の集団に所属することによるエコチェンバー現象による影響』などの話がされます。

このへんは自分がそうなってしまっていないか、定期的に考えたい事象ですね。エンジニアは結構エコーチェンバーなりやすい気がします。人口多いし、エンジニアの中でも結構多様性あるのでそれで多様性が担保できてると思っちゃいがちなんですよね…。

 

また、この本の中で『創造的なアイデアとは、多様な人々の交流の中から生まれる』という話があります。アイデアというのは突拍子もないものではなく、『アレとコレをかけ合わせたらいい感じかも!』というところから生まれることが多い、と。

アメリカにおいては移民が起業する割合が多く、これは『移民は元の文化を持ちながら、移動先の文化に溶け込む必要もあるため、その過程で融合・気づきが起きるから』と著者が分析しています。確かに、各国のチャイナタウンは中国本土とやや異なる性質を持つことが多いですが、これは『各国に溶け込んだ結果』なのかもしれません。

 

結構厚くて難しい本なのですが、本の理解の手助けになる動画もはっておきます。私は普段聞いてる動画なのですが、途中の航空機・登山の事例については事前にゆっくり解説で予習してあったので助かりました。読むよりも聞く方が楽な方はぜひ。

 

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私の母はタイ人ですが、『レジがわかんない;;;』と嘆いて帰ってくる時が最近あります。『しゃべってくれるレジはわかるけど、しゃべんないレジむずかしい』と。ここでいうしゃべるレジは対人のことではなく、レジに音声がついてるかどうか、です。漢字は読めなくても、日常会話はできるので、音がついてるとわかるんですよね。

母は漢字が苦手な例ですが、視覚が弱い人も音声があると助かるのではないでしょうか。

 

システムを作る時、つい『自分の属性に近い人』を考えてしまいがちですが、それだけではないものを考えられるように気を付けていきたいですね。個人的によく課題だなあと思うのが高齢者でも使えるシステムなのですが、そもそも画面&マウス自体が高齢者向きではない気もしていて、音声UIももう少し研究してみたい気持ちがあります。