読書と映画の記録

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儚い羊たちの祝宴 感想

儚い羊たちの祝宴読みました。

良家を巡る不思議な物語。つながっているような、つながっていないような、話たち。

良家の人々なのでどの話もお上品にはじまるのですが、だんだん雲行きが怪しくなる。いえ、最初から『ちょっとヘンだな』と思うのですが、凡人には『良家だしな、そういうもんかな』と受け流せる程度。しかし雲行きなどんどん怪しくなっていき、最後には『人って、こわ』と思う展開になるのですが、そこは良家、怖い展開すらお上品です。

びっくり展開ではない、じわじわと突き落とすタイプの怖さ。濃厚だけど後味が良いお話なのでおすすめです。(※後味の良さは個人差があるかもしれません)

 

つづきはネタバレ感想。

 

 

同じ世界観の5編かな、と思ったら、しっかりとつながった5編でした。
また5編にも『人怖い系』という大きなくくりではなく、もっと詳細な『こういうコンセプトの人たち』というのがあることが途中で発覚し、最後まで読むと『なるほどな~~!』という気持ちになれる良い作品です。ジャンルはホラーかな、と思ってたんですが、『ミステリ』の括りみたいですね。怪奇は出てこないし、行動と事実は説明可能なものばかりなので、ミステリと言われたらそうかも。

 

個人的にすごく好きなのは『北の館の罪人』。全体的に知に溢れた人たちが作中出てくるのですが、個人的にはこの話が1番知に溢れた、時間経過で発覚する事象のある話で好きです。上手く言葉にできないのですが、『謎の買い物』からはじまり、『謎の買い物は何に使ったのか』という謎明かしの後に、更にもう一段謎が明かされ、もう一段明かされることがある、ほんとにたまらないです。

 

『山荘秘聞』もすごく好きです、読者側には最初からすべてが明かされているのですが『あれ?あれ??あれれ??』ってなる展開が続いていき、最後に綺麗に1本線がつながる。またこの山荘の管理人の性格がいいんですよね。どの登場人物もこの話のコンセプトに沿った人物ですが、山荘の管理人は沿いつつ1番優雅で激情を秘めている感じでとても好きです。

 

5編の最後となる『儚い羊たちの晩餐』。これもまた徐々に明かされていく違和感が気持ちいいお話です。そして最後に本を一冊にまとめる展開。本当に気持ちよく本を閉じさせてもらいました。寝る前に読んでよかった一冊です。